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インテリア・interior

ロンドン中心部にお買いものに行って、あるビルの入り口の床材を張り直しているところを発見。色付きの陶土を小さなタイルにしたもので、約150年ぐらい前のヴィクトリア時代に流行した様式です。ビルが建てられた年代に併せ、復元しているもよう。

小さめのタイルを均一な目地幅を残して綺麗にレイアウトするのは職人技ですが、今でもその技術が残され使われているのが素晴らしい。

下の写真は改築中の別のビルで、もともとあった木製の手すりを一度外し、掃除と修復を施して元の壁に戻したところです。こういう修復は、新しいものを取り付けるよりも手間ひまがかかって施工コストも工期もかさみますが、それを受け入れて建物の歴史を新しい内装に残すことに決めた施主の意識の高さに拍手をおくります。

I respect people to pay a little more to retain a memory of a place – they help to succeed arts by fabricators and builders, too.

The two top picture are from an Victorian building in central London, where the floor is restored with original method of mosaic tiles.  The above picture is a handrail, which was taken down once to be cleaned and restored, then put back to the original wall after the whole staircase was refurbished.

ここのところ、旅行づいています。仕事での旅だと、出張先に便利なホテルに泊まるけれど、ホリデーでの滞在にはゲストハウスが気に入っています。

普通の家や農家が少し改装された宿泊施設で、ほとんどが1部屋とか多くて3部屋ぐらい。メールで予約しておいて、到着すると家主が出てきて握手して、まずはドリンクをすすめられ庭のテーブルで冷えたビールを飲む、そんな宿です。


フランスのノルマンディー地方の都市ルーアン(Rouen)のはずれの村に、お気に入りの宿があって2度目の滞在をしました。かつての領主邸が趣味よく保存され、子育ての終わったマダムがゆったりと出迎え、素晴らしい朝食を用意してくれる場所。ゲストルームもバスルームも広々と清潔で、この地方の特産だったプリント地の綿で内装されています。


窓からは草を食む馬が見え、庭に咲くバラが部屋とダイニングに飾られる。

朝食の席では別の宿泊客と一緒になり、そこから訪れた場所の情報交換などできて、これも楽しい。オーガニックのヨーグルトを楽しみ、お手製のジャムをまだ暖かいクロワッサンに載せて食べる。あぁ、幸せ。

心からくつろげる場所ですが、唯一の難点はマダムがフランス語しか話せない事。英語でゆっくり話すとわかってもらえて、マダムもゆっくりとフランス 語で答えてくれる。わたしのパートナーはフランス語が少し分かるので、これで会話が成り立つのだけれど、わたし一人ではちょっと無理。でも彼女はとても親切に、ミュージアムの開館時間をネットで調べてくれたりするのでした。

館の周りには森が広がっていて、時々ふくろうが鳴いたりします。夕暮れ時にこの森を散歩できるのも、楽しみのひとつです。

先日、帰国しました。仕事で東京と関西の間をよく往復するのですが、その中間の名古屋から内陸に足を延ばし、時間が許せば寄りたい場所があります。

多治見のギャルリ百草。今回は秋の夕暮れを楽しみました。帰路は虫の合唱に送られて。


作陶家の安藤雅信さんの仕事を『茶の箱』という本で見つけ、カフェのことを雑誌で読んで行ってみたのが昨年の夏。2度目の訪問は「茶の箱展」第3回のオープニングで、作家さんたちの集まる様子を垣間みました。

今回はとくに安藤明子さんの作る「サロン」 というスカートが目当てでした。最初の訪問でふと買ったこのサロンが夏に活躍したので、冬用が欲しくなって。重ねて着るやり方をお店の人に教えてもらい、じっくりと時間をかけて選びました。ここはスタッフの人達がいつも素晴らしいのです。

サロンを着ると、振る舞いや歩き方が少しゆったり女らしくなる気がします。着物のような「裾さばき」が必要になるから。この秋冬は短めのブーツとあわせて重ね着を楽しもうと思っています。

8月の末にAXISでフォーラムをやった時に出会ったデザイナーのひとりに「イギリスを観光するなら、外せない場所は?」と訊かれたのですが、その時に「design-hugのブログで書くから」と答えてから2週間以上経ちますね。すでに旅立ってしまったでしょうか?イギリスでもこれを読めていることを祈って。


Kettle’s Yard。ケンブリッジの中心街から少しだけ北にあるアートギャラリーの隣に、1930年代にテート・ギャラリーのキュレーターだった夫妻の住まいとアートコレクションが残っていて、それが一般公開されています。わたしはここが大好きで、これは英国の宝だと思っています。

入り口は見逃してしまうほど素っ気ない小さなドアで、ぶら下がっているリングを引っ張ると係の人がドアを開けてくれます。 まず迎えてくれるのはカンディンスキーの版画。そして、夫妻が何十年もの年月をかけて集めたというビーチで拾った「限りなく球に近い石」たち。小さな彫刻と庭の花と、貝殻やガラス玉と一緒に明るい窓辺に飾られています。もうここで、ため息が。


トイレと洗面台の間にベン・ニコルソンの版画。 階段下の小さな空間にピアノがあり、その上にはさりげなくぽつっと、ブランクーシ。。。


コーンウォールの風景画家ブライアン・ピアースがたくさんコレクションされ、ロジャー・ヒルトン、バーバラ・ヘップワース、ナウム・ガボ、ヘンリー・ムーア、ルーシー・リー。

小さなコッテージ3棟を繋げて改築し、1930年代後半のモダン様式でギャラリーとライブラリーを加えた住まいに、そのコレクションと小石や植物の種、金属の破片、ヴィクトリアンのガラス器、ナヴァホの織物などが一緒に飾られている。好きな人だったら、宝探しのような訪問になると思います。


この住まいとアートコレクションが、当時の什器そのままケンブリッジ大学に寄贈され無料で公開されているという、そのスピリットおおらかさ。インテリアを撮影したい人は3ポンドを払い入り口で許可を得ますが、「本当に3ポンドでいいんでしょうか?」といつも思います。何度行っても「帰りたくない、ここに泊まりたい。」と思う場所なのです。

Have a good journey.

一週間ほど、「グランドプリンスホテル赤坂」に滞在しました。お気に入りの東京の宿です。


どの部屋も「角部屋」で窓が大きく眺めが良い。部屋の照明を落として夜景を楽しめます。


飾りすぎない、素っ気ないインテリアも好み。サーリネンの椅子が似合います。廊下のドアを開けるとまず廊下があるのも好き。この距離があるから、廊下の音がベッドまで届かない。


その廊下にはバスルームの入り口、クローゼットと並んで冷蔵庫やミニバーもある。片面は大きな鏡。必要だれど雑多なものが寝室からは見えないのは気持ちよい。どのタイプの部屋に泊まってもプランに感心します。

洗面台とバスルームも、質実剛健。たっぷり物を置けるスペースがあり、鏡に近づくことが出来て、しっかりした照明があること。これが洗面まわりの3大条件だと思うのだけど、ここはさらに、使用後に「こざっぱり」保てる素材で、気持ちよいのです。デザインホテルにありがちな「水しぶきが散ったらもう台なし」という洗面台が嫌いなので。



エレベーターホールにある電話台、これもサーリネンかな?時代が一巡して、レトロと言うには「今」にしっくり落ち着く感じ。

この丹下健三設計の新館は1983年にオープンした建物で、ウィキペディアによると「大規模改修が行なわれず老朽化が進んでいる。地域再開発も含めて検討課題とされている。」とあるけど、、、再開発なんてしないで、この親しみやすい「赤プリ」はこのまま残して欲しいです。

ホテルマン&ウーマンが気持ちよいのもここの美点。他のプリンスホテルのようにチェックアウトで並ぶことがなく、出かける時もフロントに着くまでに誰かが来て鍵を預かってくれます。ある時は、ここのセーフティーボックスにパスポートや通帳、外貨なんかを一切合切置き忘れたのだけど(迷惑な客ですね、、)、丁寧な対応で次の宿に郵送してくれました。

「ノー・クリーニング券」も気に入っています。「今日は掃除とタオル交換は必要ないです」という紙を残しておくと、ゴミ箱だけは空にしてくれ、「館内で使える1,000円券」というのを渡されます。宿泊費の割引ですね。部屋にたっぷり置いてあるタオルを毎日替えてもらわなくてもぜんぜん平気だし、シーツも毎日替える必要ないもの。いつも「ホテルって、環境に悪い、、」と思うので、少し気が軽くなる。で、この券を持って朝食を食べに行くのです。高級レストランか料亭しか選べない朝食がとっても高いのだけが不満で、いつも「素泊まり」なので。

どんなに格好よく見せかけを作っても、ニセモノに囲まれた空間では心からくつろげない、、、という体験をしました。


先週、出張で行ったイタリアの都市パドヴァで、スペインの「デザイン・ホテル」AC HotelsチェーンのひとつAC Padovaに泊まった時のこと。

古都の城壁の外、工業地帯の入り口、という立地だけど、2重窓で静かだし、清潔。サービスは節度があって気持ちよく、モダンだけど大きすぎないサイズ。かなり気に入りそうなホテルなのに、、、惜しいなぁ。


レセプション周りは、さすがにちゃんとしてました。シックで快適。色使いも照明も、質感もよい感じ。でも、客室が。


最初の印象は悪くなかった。床やカーテンの色合いは落ち着いて、照明もしっとり、収納もたくさんある。掛かってるコルビジェの教会の写真もいい感じ。でも椅子が「なんちゃってイームズ」だと気づき、あらら、、と思って見回すと、偽物だらけだったのです。レセプションの前にあったソファはデンマークのラムハルツだったけど、客室にあるのはそれを真似て作った稚拙なソファ。脚の金物はスプレー塗装だし。極めつけはウォールナットに似せた木目がプリントされているビニール張りの床。まあねぇ、こういう場所では、ハイヒールの跡が残る床材を使いたくないのは分かるけど、、。

バスタブは大きく立派に見えるのに、プラスティック。これは、中に入るとパカパカ音がするし、底はふわふわするし「ホテルで入浴」という楽しみの時間を台無しにしてくれるよなぁ、、と思う。洗面台は、見栄えは良いガラス板だけど、これ、メタルの土台との接着部分をキレイに紫外線溶着しないと、ボンドみたいなのが透けて見えるのはかっこ悪いです。こんな掃除に手のかかる素材を使うなら、それくらいの気は遣って欲しいと思う。くぼみの大きさが微妙で水は飛び散り、裏をつつーっと水が流れたりするので、翌朝にはかなり汚れた印象になってしまう。しかも、天板に傾斜があって、置いてあったゴルフボール型(なぜ!?)の石けんが濡れた軌跡を描きながら転がるのが、ぁあ、うっとうしい!


なぜ、ニセモノだとくつろげないか。

気持ちの良いホテルに泊まる、というのはちょっとした非日常の、ご褒美のようなものだと思うのです。毎日働いてがんばってるし、たまには掃除とかベッドメイキングのことを考えなくてもいい、誰かが朝食を作ってくれる場所でのびのびとくつろぎたい。なのに、そんな場所でニセモノに出会うと「ここに泊まる客にはね、所詮これくらいでいいんですよ、たいして高い料金を払っている訳でもないんだから、表面だけかっこう良くしておいたら」という、隠れたメッセージのようなものが見えてしまう。「これくらいでいいだろう」という気持ちで用意された場所では、人は大事に扱われているとは感じられない。

イームズの本物が予算からして高すぎたら、なんちゃってイームズを買わないで、同じ値段でも誰かがもっと誠意を持って作った別の家具が見つかるはず。ばかみたいに大きなバスタブを入れなくても、心地の良い浴室はいくらでも考えられる。「あなたの快適な今夜ために、予算はそんなにかけていないけど、誠意のあるものたちでこの部屋を用意しました」という場所は、たしかにあるし、そこはわたしをくつろいだ幸せな気分にしてくれる。と、そう思うのです。手作りのジャムやお菓子が置かれている、自分でお茶をいれて飲めるような小さなB&Bなんかは、ニセモノの置かれた「デザインホテル」よりはよっぽど快適に過ごせる。それは、ゲストとしてもてなされている、そのホスピタリティーをしっかり受け取れるからですよね。

この「真のホスピタリティー」はHPやホテル・レビューでは分からないものだなあ、と思う。今回はがっくりしたけど、朝食はまあまあ良かったし(まあまあ、ね)、レセプションも感じが良くてミラノで普段泊まるホテルに比べればよっぽど快適だったので、AC Milanoには、今後泊まるかもしれない。ネガティブ・チョイスなので「楽しもう」というスイッチはオフにして。このあたりの、宿泊にかける費用と結果としての心地よさのバランスって、ほんと難しいです。

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I realise that there are a lots of visitors to this blog from abroad. So, I write in English as well today, because it is not easy to get message of this post by photos only.

I stayed in a hotel in Padova, named AC Padova, one of AC hotels run by a Spanish company.

OK, I have to admit that the reception area is good, chic and nice texture of materials and colour. People are professional, nice and helpful. Breakfast was not bad, either.

But once you step into your guest room, then you find items in the room are all copy or fake or substitute – from ‘inspired’ Eames chair to Walnut printed vinyl floor and big plastic bathtub. I could not be really happy being in this room, as I received subtle message of management that says ‘you are not paying huge amount of money anyway, so forge Design Hotel is suitable for you’. This message damages impression of whole experience, leave scrach in your mind and you are not entirely comfortable there. You want to go home, being surrounded by not expensive, but honest things.


「レトロ・ロンド」のあったOudenaardeという街で泊まった「Steenhuyse」は、街の中心の広場に面した築500年の建物の内部をモダンに改装したゲストハウス。


デンマーク人とベルギー人の夫婦が1年半をかけて改装工事をした話を聞く事ができて、興味深かったです。歴史的な建物なので外観を変えるのはもってのほか、2重窓にすることさえ許可が降りなかったのだとか。客室はフィリプ・スタルク、レセプションやダイニングはほとんどがデンマークのクラシック・モダンでまとめてあって、外観との対比がとても素敵なゲストハウスでした。


朝食にはたくさんの種類のパンやチーズ、ベルギーならではのワッフルやチョコレートまで並び、卵を料理してくれ、たっぷりな量のコーヒーや紅茶が運ばれる。 なかなか贅沢でゆったりした朝の時間を過ごした。朝食の質は、宿の重要なポイントですね。


でも、ミニマムすぎる客室はちょっと使いづらかった。トイレのドアがないのは、やはりあんまり気持ちのいいものではないなぁ。脇にちょっと壁があるだけ、というのは。日本人だからでしょうか?カップルで泊まっても、積極的に見せたくない場面はあるし、音も気になりますよね?

部屋の真ん中にどどーんとあるスタルクのバスタブは、大きすぎ。お湯を溜めても溜めても、水位が上がらない。こんなにたくさん水を使うの、もったいない、、、とつい思ってしまう。

洗面台の周りのテーブル面が狭いのも使い勝手が悪い。歯ブラシだけじゃなく、いろいろ置きたいですよね、洗面台のまわりには。こんなに空間があるんなら、見栄えよく使いやすくいくらでも出来るのに、、、とついついスケッチブックとメジャーを出してスタディーしそうでした。

インテリアの趣味やもてなしの質も高かったけれど、こういう雰囲気を保ちつつethicalなホテル経営をするのは、とても難しいことなんだなぁ、と思った。夜、宿に戻って煌々と明かりの灯るリビングやダイニングに入って思ったのは、この華やかさを残しつつ電気消費量を下げるには、いろいろとアイデアが要るなぁ、ということ。でも、こんなに明るくしているのは、客がこれを望んでいるとホテルの人が思っているから? 結局は、泊まる客の側の意識の変化しか、ホテルを変えるものはないのかもしれません。

ホテルの石けんって、回収されてリサイクルされたりするんでしょうか?どなたかそういう事情、知ってます? 「タオルはまだ替えなくてもいいですよ」とスマートに客がサインを送れるような、そんなユニバーサルな作法はないものかしら、、、。

前回の河井寛次郎記念館のことを書いていて、この春に訪れたバーバラ・ヘップワースのアトリエを思い出したので、続けて紹介します。


なんといっても、庭。「Museum & Garden 」と呼ばれているくらいなので。手が入っているけど、よい感じに自然味の残された庭。そこに彼女の作品が点々と置かれています。母屋から、一旦庭に出てアトリエに入る。


ここは「思索室」。河井邸での庭を眺める茶室にも通じる、光溢れる温室。


こちらは制作室。扱う素材もさまざまだったので、かなり広い。石彫のコーナー、石膏や粘土の場所、それを鋳型にする作業机など。ここも天窓から光がさんさんと入る。使われている道具や物の置き方など、乱雑な中にも美意識が徹底しているアトリエ。


エントランスの上の階、母屋の一角にあるサロン。小さめの作品を置くギャラリーでもある。元夫で2人の娘の父だったベン・ニコルソンの作品が掛かっていたり。

住まいとアトリエの適度な距離感、表通りからはほとんど何も中の様子をうかがえない素っ気ないほどのたたずまい、中に入ると気持ちよく広がる庭と手作業で作られたり集められたりしたお気に入りの物たち。そんな場所を、家もアトリエも庭も、長い時間をかけて丁寧に作っていったのだなあ、と想像する。数々の作品の背景に、この楽しくも地道な作業も隠れていたことに思いを巡らせる。こんなに心惹かれるのは、それがわたしのやりたい事だからですね、きっと。


この奥に、あの庭が広がるとは想像もできない入り口。Tate St. Ivesの別館として公開されています。この夏にはバーナード・リーチのアトリエも公開になるそうです。


アトリエを出て5、6分歩くと海辺に出る。こんな風景を間近に見ながら制作していたなんて、、、いいなあ。

新緑の京都で「河井寛次郎記念館」を訪れました。

表からは京都の町家に見えるけれど、中は深く広く、住居とスタジオと作業のための中庭と、素焼き用の竃、そして奥の傾斜に沿って登り竃がある。氏が当時仕事をして家族が暮らしていた様子そのままに保存してある貴重な場所です。


住まいと仕事場を心地よく区切る中庭。そして迫力の登り竃。手前から2番目の室から、数多くの作品が生まれたそうです。


素焼きされた陶器に釉薬をかける作業をしたスタジオ前の中庭。並んだ壷の中に釉薬。

住居部は飛騨の合掌造りの内部を思わせる、吹き抜けのあるどっしりした空間。建具や家具のディテールに民芸の重量感と京都の繊細さが同時に息づいている。


実は大学院生だった14年前に一度行っているのだけど、ほとんど印象に残っていなかった。今回あまりに感銘を受けたので「すでに28才にもなっていたわたしは、どうしてこの良さが分からなかったんだろう?」と呆れたり。たぶん、「暮らす」ことと「仕事をする」ことが一緒になっているこの心地よさを、建物の細部まで気を配ったこの住まいの暖かさを、理解してなかったのですね。若かった、、、。

河井寛次郎や浜田庄司の重厚な陶器があまり好みでない、というのは今でも正直なところなのですが、今回の訪問でそういう作品や民芸の運動の後ろにある、日々の生活を大切にする彼らの思想に触れました。バーバラ・ヘップワースのスタジオと自邸、仕事場と融合した庭などを見て受けた印象と、似ている気がします。

わたしのスタジオ兼住まいの玄関ドアには鍵穴が3つある。いわゆる「キャッチ」でばたん!と自動ロックされ、外からは鍵を入れて回して開ける「リムロック」と、その上下に鍵を入れて回すと太い金属のバーがスライドしてドアを止める「デッドロック」が2つ。

イギリスの冬は湿度が高いので木製のドアが膨張し、この「デッドロック」の鍵穴の位置がずれるようで、毎年、秋も深まると下のほうの鍵がかからなくなります。

気温が高くなると、ドアも乾燥して引き締まり、両方の鍵がちゃんとかかるようになる。今週から両方かかるようになった。春になったな〜、と思う。


スタジオにはもう一枚、季節を感じさせてくれるドアがある。スタジオに隣接したバスルームに入るための2枚のドアのうちの一枚が、冬になると膨張して午前中は閉まらないのです。午後になって暖房が効いてくるとドアも乾いて収縮し、閉まる。これはクリアランスを少なくしすぎた設計ミス。あと2ミリ足してたら大丈夫だったのに。でも、3枚のパネルがあたかもつなぎ目のないかのごとく並んでいるほうが格好いいと思った。自分でデザインして改装したのでこういう失敗は「学習」ですが、それにしても閉まってないのは格好わるい、、と冬ごとに思うのでした。


ちなみにスタジオ兼住居は1920年代に建てられた元おもちゃ工場だった建物の一角にあります。住宅地と工場地帯の狭間という感じの、どちらかというとラフな地域なのだけど、この中庭に入ると少しほっとする。そんな場所です。