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Monthly Archives: October 2009

「苔」の次の(というか並走している)マイ・ブームは「雲」です。

サイクリングしてると、雨雲の行方とか風の方向とか、空の様子を目の端でいつも見ている。そして、休憩する時は伸びをして空を眺めることが多いのです。

こんな雲がぐんぐん迫ってることに気づいて大急ぎでこいで逃げたり。

海辺に立つと、豪快な雲に出会うことがある。大地と海が出会う辺りには、ダイナミックな空気の動きがあるのですね。 そこに夕日が当たっていたりすると、素晴らしいプレゼントを旅の途中でもらったような嬉しさがあります。

少し前にBBCの「Cloud Collectors」という番組で「The Cloud Appreciation Society」という会を作ったイギリス人Gavin Pretor-Pinneyが、雲を分類し記録にとって集める楽しさについて話していました。この「雲を賞賛する会」は会員が世界に1万人以上いると知り、空を見上げて「わー!」と言ってるのはわたしだけではなかったことを知った。サイトはこれです。

The Cloud Appreciation Society

このプレゼンターが携帯に便利なようにまとめた本「The Cloud Collector’s Handbook」を見つけ、英語では雲に詩的なニックネームが少ないことや、雲は高さや形状で分類され、ラテン語の学名で呼び分けられることを知り、その舌を噛みそうな名前を憶えてみたくなったのです。

そして、今回の帰国でこの本を持って飛行機に乗ったら、ほんとうに楽しかった!今まで、地上からではいまいち判断がつきかねていた雲の高低がはっきり見えたし、離陸や着陸の時に、層になって浮かんでいる雲の間を飛行機が飛んだりする。「おおー、アルトクムルスとストラトクムルスの間を飛んでいる〜〜」とか「ホントに綺麗なしましまになってる〜〜、あれはウンデュラトゥス、、」などと本と見比べ、心のなかでぶつぶつ言いながら何枚も写真を撮ったのでした。

この一枚は国内線から見た中央アルプスにかかる雲とそこから頭が出ている富士山。翌日の復路では、夕焼けに染まった雲の層の間を飛行機が飛び、刻々と移りゆく色をうっとりと眺めたのでした。

周りの人たちに教えてあげたい、と思ったのだけど、寝ている人を起こすのも悪いし、がまんしました。出張のフライトは疲れるけれど、この小さな本一冊で、こんなにフライトが楽しくなったのは自分でも驚きでした。

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今日(正確には昨日)から東京ミッドタウンの地下で始まったデザインタイドは、会場構成が「雲」です。これは地上から雲を見上げてるのではなくて、展示も観客も上空2000~3000メートルぐらいに浮いていて、ストラトクムルスの上面がでこぼこした中を歩いている感じ、、、かな?

1990年に当時の通商産業省、現在の経済産業省が制定したのだそうです。知っていました?

その「デザインの日」にちなんで、今日は久しぶりに本業のデザインについて書こうと思います。ちょうど、先週末にLondon Design Festivalの名のもと、たくさん開催された恒例のデザイン週間が終わったところです。

今年はわたしのスタジオでは「100% Design London」では「TEN-XYZ」というグループ展で鳥小屋をMARKという英国のレーベルからフロアランプを発表し、イースト・ロンドンの Rocket というギャラリーではコーヒーテーブルを展示しました。

「TEN」は2006年にロンドン在住の友人デザイナーが10人集まり「見本市でもサステナブルを語るべきだ!」というスローガンで自主テーマ展を始め、それがその年の「ベスト・スタンド賞」を受賞したので翌年も続き、その翌年にはクラフツ・カウンシルがスポンサーになり、、というような経緯で4年目を迎えた展示です。毎年のプロジェクトやディスカッション、開発の過程などはブログ「TEN.blog」でレポートしています。

今年は東ロンドンにあるデジタル設備のラボ Metropolitan Worksがスポンサーについたので、展示のテーマは「持続可能性とデジタル・テクノロジーの融合」でした。

わたしのスタジオでは、サルベージ・ヤードで見つけた100年前の屋根瓦をラボのウォータージェット・カッターで小さく切り、パイン材をレーザーカットした壁を組み合わせた鳥小屋とえさ小屋をデザインしました。 レーザーカットする時に同時に模様も焼き付けることが出来るので、瓦の歴史を尊重したヴィクトリアン様式やジョージアン様式のファサードを持つ小屋になりました。

英国の西端、コーンウォール州にある MARK は、発足から持続可能性と地域の産業の復興をコンセプトにした家具レーベルです。この会社のために、去年はノックダウンできる小さなテーブルを3種デザインしたのですが、今年はそれにフロアランプを足しました。

背の高いランプですが、これもノックダウンできて細長い薄い箱におさまり、搬送時の環境負荷を減らそうと試みています。これからは、どの企業も製造や搬送のすべての過程で知恵をしぼってエネルギーの使い方を見直すことになるのだと思います。

左端のテーブルは延長コードやアダプターをしまっておくコンテナがついていて、充電用のプラグがハンドルの下からテーブル上にのぞいています。家に戻った時に携帯電話やiPod、デジタルカメラなどをテーブル上で充電するための家具です。

イーストロンドンのRocket Galleryでは「Book a Table」という企画展で、Benchmark Furnitureと共同開発したスタッキングできるコーヒーテーブル「Hexad」を発表しました。

ムクのオーク材を組み合わせた六角形のテーブルで、組み合わせによっては細長いテーブルにしたり面積を大きくしたりできます。

イギリス企業や友人たちとのプロジェクトはこれで一段落しました。この秋は、来年の春の見本市サローネに向けて、あちこち走り回ることになります。