お久しぶりです。
最近、どういうわけかブログをアップする時間がない、、、と思っていたら、どうも精神的なことみたいです。2年かけて手がけている公共プロ ジェクトの、メインでデザインしていた家具が使われないことになった、と告げられ1月後半からずっとへこんでいました。こういう、自分の力のおよばない挫折は気持ちの持って行き場所に困ります。
少し元気になってきたので、今日は好きなものを。
紙。
紙は子どもの頃から好きでした。再生紙の買い物袋を母からもらって工作した、あの果物の匂いの混ざった紙の匂い、ざらっとした手触りや乾いた音。紙は、わたしにとってあの頃から、単なる素材ではなくて特別なものでした。
学生の頃は、紙やスチレンボードで住宅模型を作るのが、設計そのものよりも楽しかった気がします。設計事務所やゼネコンのデザイン室に勤めていた頃も、建築模型やスタディーモデルを作るために伊東屋や製紙会社のショールームに行くのが楽しみで、色紙の端切れを捨てられずに引き出しに集めていました。
Royal College of Artの卒業制作でも、家具のとなりに手漉きの紙に照明を組み合わせたスクリーンを展示したのでした。
プロジェクトでもよく紙を使います。上の写真はオークション・カタログを切り刻んで作ったバード・ハウス。
下は熱プレスすると半透明になる特殊紙「パチカ」を使った照明器具。プレスのムラが和紙のような表情になりました。
ほかにも、
『Twiggy Lamp』
このシェードは正確にはプラスティック・シートだけれど、印刷のための皮膜が影を写し出す紙の性格を使ったもの。
『Banquet Table Lamps』『Aalto Voice』など、トレーシングペーパーやコピー紙も、光と組み合せて揺らす工夫をすると、影を映し表情が出ます。
家具のデザインも紙で作る縮小モデルから始まるので、いろいろなサイズの紙模型がスタジオの棚に並びます。
紙は、ただ情報を載せて運ぶだけではなく、書籍になって思想や思い出を伝えるものですが、素材としても、情緒的なものや思考の過程、きめ細かい触感や体温のようなものを伝えてくれる媒体だと思っています。
最近よく覗きに行くブログ「of paper and things」ではたくさんの紙の作品が紹介されています。Maria IkonomopoulouやChris Kennyの作品は、透け、重なり、小さな動きが想像できてとても好き。日本人Yuken Teruyaの作品は、紙袋やトイレットペーパの芯など日頃見慣れたものから繊細な世界が立ち上がっている。印刷物を立体に使った作品も面白いです。
紙にまつわる印刷物や切手、タイプフェイスなどを紹介しているブログ「Ace Jet 170」も近頃のお気に入りです。文字を集めている写真も楽しいし、こんなハンコにも昔から目がないのです。
紙のことを考えはじめたきっかけは、竹尾ペーパーショウの告知でした。今年は展示会はなく、紙の未来を語る講演会なのだそうです。この時期に帰国できなくて、残念。
時間を忘れてあちこちからイメージを集め、好きなものを羅列したら、元気が出てきた気がします。刺激を受けたものをこのブログにアップするのも、元気でいる秘訣だったのかも。
I like to use paper for my projects, its characteristics – translucency for example, sounds and its fragility.