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本・book

スタジオの裏庭にゼラニウムがたくさん咲き、花びらが散ったあとに、先がくるくると丸まったかわいいものが出来ているのを発見。

I found a few little ‘seed dispersal mechanism’ after a lots of pink Geranium flowers have finished.  They are formed by delicate spirals and the ‘heads’ are empty if you give it a close look.

gera00gera01よく見ると、花のつけ根の部分がふくらんで、緑色から褐色に変わっていき、その後に細長く伸びた中心(花柱と呼ぶそうです)が5つに割れる感じにめくれて、この形になるようです。くるんとなった時には、種に見えるのはもうカラで、中の種はどこかに飛んでなくなっている。

After the flower, the bottom part of petals are grown into five green round containers, turn into brown.  Then the central ‘style’ will be split into 5 strips, curled up and throw seeds away.

gera02gera03いくつか根元のふくらみが残っているものを切り取ってデスクの上に置いておいたら、しばらくして「ぱさっ」というかすかな乾いた音がして、硬い種がころころと転がったのです。3センチ足らずの花柱が乾いて反る力で、3メートルも遠くに種を飛ばす。地味な花のゼラニウムが、気付くと日陰で群生しているのは、この飛ばし機能でテリトリーを広げるからだったのですね。

I picked one ‘throwing-in-progress’ head and put it on my desk.  A a few hours later, I heard a tiny pop sound and a seed was thrown more than 3 meters.  Amazing way to expand its territory!

gera04かわいいだけでなく、おそるべし自然。

そういえば、たまたま通りかかったINAXギャラリーの『種子のデザイン-旅するかたち』という展覧会が時間を忘れるほど面白く、カタログを買っていたことを思い出してしばし読みふけりました。

This little but genius mechanism reminds me of an exhibition I saw in Tokyo, which catalogue shows a lot of exotic tree seeds which travel the long distance.

gera05この本に出てくる南国のエキゾチックな植物でなくても、身の回りで普段目にしている花や雑草にもこんな生命力がある。雑草のように茂っているゼラニウムに、なぜか元気づけられるのでした。

Somehow they give me a feeling of vitality.

年の始めに「今年はもう少しアップします」と記したのに、ブログの更新は2月以上の間隔が空いてしまいました、、。見たもの、行った場所から考えたことがたくさんあるのに、どこから手をつけたらいいの?という感じなので、師走になった今、まずは今年の「発見」から。

一つ前のポストで触感について書きましたが、 触覚とあわせて最近とても興味があるのが「嗅覚」です。デザイナーとして「視覚の快適さ」をいつも意識していますが、嗅覚は忘れられがちだなぁ、とふと思い、ではもしも「匂いのランドスケープ」についてもっと意識したら世界はどう見えるかな?と思った。そんな時に手にとって、面白い世界の見方(かぎ方?)を教えられたのが、この本です。

『調香師の手帖(ノオト)』-香りの世界をさぐる-
中村祥二著・朝日文庫 2008年出版

資生堂で長年香りについて研究をし、香水を調香する専門家としての著者が「香りやにおいをめぐる新しい心の文化を模索しようという人たちのために、何らかの意味を持てば」という意図で書き下ろされた随筆です。自身の体験からつむがれた言葉で匂いについて説明したい、とあとがきで語られているように、読みすすむと追体験をしているような錯覚にかられ脳内に匂いが立ちこめる。それがわたしの楽しい読書体験でした。

そして、この本をガイドとして少し実体験をしてみているところです。

ひとつは全く未知の世界だった香水に手を出し始めたこと。
文中で触れられていたある香水の「単一のウッディー・ノートを特徴にした上品で優雅な香り」というものをかいでみたく、そして香水は「身にまとって」みないとその効果を感じられない、ということばに納得し購入。あまりにもビギナーで経験が浅く、他のものとの比較がまったくできないこともあり、感想は「うーん?」というところ。西洋人だと、自分の体が発する匂いと混ざっていわくいいがたい香りになるのかなぁ、わたしは香水に負けている?という気がするのです。もしかすると、香水は自分が楽しむというよりも、同席する他の人たちに向けたメッセージなのかも?と思ったり。

もうひとつは、近年たのしんでいたお香の世界にもう少しだけ歩を進めてみたこと。
お香は同じものを使い続けるよりも、違うものをあいだに使うと鼻が覚醒される、という言葉にふむふむとうなずき、インテリアの一部のように使っている松栄堂の「堀川」のルーティーンに「天平」を足してみました。これはとても興味深い効果で、時に違う匂いをかぐと、慣れ親しんでいると思っていた匂いの新しい要素のようなものに気付いたり、残り香を調整するため使う量を変えてみたりと、自分にとってもっとも心地よい匂いについて、考えさせてくれます。

さらに香木そのものをかいで(専門的には「聞いて」?)みたくなり、でも炭を熾して仕立てる本格的な聞香の手間はおっくうなので、小さなヒーターで暖める携帯式の香炉を試してみました。白檀と沈香の小さなかけらそのものから、すぅっと立ちのぼる香り。これは、驚きです。自然のちょっとした偶然の作り出す物質が、暖められるだけでこんなに強い匂いを放ち、それを古代の人が見つけて大切に使ってきたこと、、、。悠久の時間に思いを馳せるきっかけをくれる香り。つい、他の普通の木はどんな香りを放っているのかな?と手に取るすべての木材をくんくんしてしまうような。

鼻をもっと鍛えたら、自分の周りの感覚地図はかなり違ったものになってくるなぁ、という、不思議な予感をくれた本でした。新しい感覚地図と、毎日のデザインの仕事がどう重なるのか?については、まだまったく予測不可能なのですが。

AXIS誌135号(2008年10月号)の「本づくし」のコーナーに掲載された記事がオンラインで読めるようになりました。

グッド・ニュース』の著者、デヴィッド・スズキはカナダで有名な日系人のTVプレゼンターで「あなたが世界を変える日」として名高い、1992年の環境サミットでスピーチをした「12歳の少女」セバン・カリス-スズキの父でもあります。

17年も前に、12才の少女がこんな発言をして集まった各国政府関係者が深く感銘を受けた。なのに、現在それを政策にまともに反映させているのはドイツと北欧各国とキューバと、インドの中の少数の自治州くらいである、という事実には正直、落胆してしまいます。その17年はそのまま、わたしがロンドンで暮らしてきた時間でもあります。最初は学生で、卒業してからは自分の生活を成り立たせるためにジタバタしていた、、、というのは言い訳で、環境問題を頭の片すみで知りつつ、最近まで積極的には何もしなかったのはいったいどうしてだったんだろう?と自問してみる。やはり、問題があまりに大きくて何から手を付けていいのか分からず、自分の非力さを感じていたのだと思います。

でも、時代は確実に変わってきている。すぐに行動に移さないと手遅れになるとたくさんの人が思っている今、この本が多くの人に「何ができるか」について考えるきっかけを与えてくれることを願わずにいられません。

I read this book, ‘Good News for a Change’, and wrote a book review for AXIS magazine vol. 135, October 2008.  The article is now on-line, so I want to introduce it to my blog readers.  One of the authers David Suzuki is an environmental activist and father of Severn Cullis-Suzuki, who made a famous speech at UN Earth Sammit in 1992.  I learnt a lot from this book, gave me hope on what we can start to do something for the earth and ourselves.

京都にある記念館を訪れた時にそこで買った、作陶家、河井寛次郎のエッセイ集『火の誓い』をやっと読み終えました。

「序」にあるように、この本には彼が「美とは何から生まれるのか?」というふつふつとした疑問に対し、子供の頃の思い出や職人の仕事を見て感じること、友人の作品への感想といったたくさんの入り口を通して答えを探そうとしている日々の思索が綴られています。

「人は物の最後の効果だけ熱心になりがちである。そして物からは最後の結果に打たれるものだと錯誤しがちである。しかし実は、直接に物とは縁遠い背後のものに一番打たれているのだという事のこれは報告でもある。」という一文ですでに、ページを一旦閉じてしばらく咀嚼してはまた戻る、、、そういう噛みしめるような読み方をした久しぶりの本でした。

デルフトの陶器に出会い、その作者の試行錯誤を想像する。あたかも彼自身がオランダの地で遠い中国の「青華」に心うばわれ再現しようとあれこれ工夫する陶工であるかのような描写に引き込まれる「陶器からの聞き書き」。

そう、素晴らしい物に出会った時、これに似た想像をしてデザイナーや作者の思いをなぞる事がある、、、と思い当たります。 河井寛次郎の眼差しは、素朴な藁の細工や農村の合理的で質素なたたずまい、地方の窯場で作られる飾り気のない日用の雑器に向けられ、その背後にある風土と知恵と歴史を追い、そこにこそ本質的な美しさがあることを教えてくれます。

中頃のページにある地方の窯場のたたずまいや彼が育った山陰の風物の描写はどれも、わたしたちがすでに失ってしまった美しい日本を想像させ、そういう生き生きとした記憶を持ち得ないわたし自身が育った環境を考えるとだんだんと悲しくなってくる、、、それが正直な感想で、だからこの本を読み終えるのに半年以上もかかってしまったのでした。

そして後半、作陶家である彼が自分の作品とどう向き合うかを詩にした『いのちの窓』。これは、圧巻です。

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「閉門
何ものも清めて返す火の誓い」

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彼にとって、焼成の過程は「火が作品を清めてくれる」ものだったのですね。そんな「扉を閉めたら、あとは偶然に作品を委ねる」陶芸の世界に、強い憧れの気持ちを抱きました。

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新しい自分が見たいのだー仕事する

物買って来る 自分買って来る

ひとりの仕事でありながら
ひとりの仕事でない仕事

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自分の中にあるものが良い形で反映されるような仕事がしたい。わたしが今日、たくさんの物の中から選び取って買うものは、それがどんな性質のものであれ将来の自分を作り上げる一因になる。デスクの上の風景ですら、明日のわたしの仕事の美意識を育てたり壊したりするかもしれない。どんな仕事をするかは自分ひとりで決定していくしかないけれど、どんな仕事も自分ひとりの力ではなし得ない、、、。簡潔な詩に触発され、あふれるようにあれこれ考えはじめた。言葉の力を感じます。

ものを見ること、背景を考えること、意思を持って選び取ること。その日々の積み重ねの大事さを静かに、そして力強く教えてくれたエッセイでした。


写真はエッセイでも触れられ、あとがきで記念館の館長である娘の河井須也子さんも書いている藁細工の座布団と、その上であくびする猫。

前回のパドヴァのホテルの話を書いていて、思い出した本があります。なぜニセモノに囲まれると幸せを感じないのか?、、と考えていた時、わたしが以前に読んで影響を受けているのはあの本だった、、と思い出したのです。


「働き方研究家」という肩書きを持つ西村佳哲さんの著書『 自分の仕事をつくる』。

この本に出てくる「パタゴニア」のサンダルを先日買ったところで、「どんな事が書いてあったかな?」と思ったので読み返してみました。再度、というか以前よりもさらに共感する部分が多くて、著者の考え方の先進性に唸ることたびたび。

「ほんとに、こんなやり方で続くのかな!?」と落ち込みそうな時に「誰だって、 自分のやり方を探しているのよね。問題は愛の大きさなんだ!」と励まされる。わたしはここ数日、とても励まされました。

登場する「愛のある仕事人」は、著者がすばらしいと思った商品をデザインした人たちで、それが持っている物のデザイナーだと、そのモノが生まれたのはこういう「働き方」があったからだ、、と納得できるのです。

前書きに「周りの物も風景も、誰かの仕事の結果としてそこにある。その仕事が『こんなもんでいい』という態度で作られていたら、それを手にする人の存在を否定する。それは棘のように精神にダメージを与えているだろう。逆に、心を込めて作られたものはそれを含む世界を良く変えて行く力を持っているのではないか」という主旨の文があって、デザイナーとして出来る事への限界というか、そういう気持ちで見ていた世界が少しふわっと押し広げられたような気がしました。

2003年に出版されたこの本に「これから脱工業化社会が本当に進展しつつあったら」とか「モノがあること、あるいはお金があることが豊かさではないことはわかってきた。では、次に目指すべき豊かさは、どこに」という今起きている社会全体のシフトをすでに見据えているフレーズがあちこちにある。5年前、わたしはまだこの著者ほど環境に対する危機感もなく、育ちすぎた消費社会に違和感も持たず、日々のことにただあくせくしていたなぁ、、と振り返ったりするのでした。

今回、いちばんごん!と腹に応えた一文は 「他者の力を引き出す人」ファシリテーターのところで、人がセルフ・エスティーム(自己是定感情)を育むために第三者に何ができるか、という考察をしている箇所です。

『それは「あなたには価値がある」と口で言うことではなく、その人の存在に対する真剣さの強度を、態度と行動で体現することだと僕は思う。』

これは経営者がスタッフの能力を引き出す、という狭い使われ方を越えて、家族やパートナー、共同体で出会う人々を幸せにし、かつ自分が幸せを感じるための基本中の基本ですね。はぁぁぁ。忙しい、いそがしいとつぶやいてちゃダメだ。こんな大切なことをつい忘れて毎日を過ごしているけど、ちょっとしたきっかけでこの本に再会してこの言葉にもう一度出会えて良かったと思う。パタゴニアのサンダルと、ビジネス旅行にThanks。

前回に引き続き、D&DEPARTMENTについて。

ナガオカさんのさまざまな活動の中でもとくに評価するのは、出版やHPやブログでその考え方や活動のプロセスを広く世間に知ってもらおうとする、その努力です。これはとても根気のいる、しかも結果の見えにくいことで、長く続けてやっとその真価を計る事ができることだと思う。そして、自らの考えをまとめて整理し、行く先を考える時にとても重要な作業だと思うのです。

帰国するたびに、本屋で見つけたら買っていた彼らの雑誌「d」。


丁寧な取材の結果がレポートされ、今まで知らなかったことがいつも紹介されていて、楽しい驚きがある。ナガオカさんとそのチームの「ロングライフデザイン」に対するいろいろな角度からの考察と、その熱意にいつも感心しながら読んでいました。

特に好きだったのが、写真に撮った2冊。8号の『サンタクロースとは何か?』を読んで、不覚にも新幹線の中でぽろっと涙をこぼし、ルイス・カーンの言葉にボーゼンと車窓から過ぎ行く風景を眺めた。9号は、落ち込んでる時に読んだのでハッリ・コスキネンの笑顔に癒され、話題になっていた「PSE法」について学び、三國シェフの話の深さに打たれ、深澤直人さんのスピッツ評に思い切りうなづいたり(たまたま、数日前に偶然スピッツを聴いていたのです)して、読み終わる頃には元気になっていて、、、と、2冊丸ごと心から楽しんだのでした。

先日のお店訪問で何冊かまとめてバックナンバーを入手し、最新号の編集後記を読んだら、今までの形態では売れなかったので、休刊してリニューアルします、とあった。デザインが語られる時にそれが表沙汰になる「順番」についての考察が、そのままこの小冊子への自らの批評だったのは、象徴的なことかもしれない、、と、名残を惜しみつつも納得しました。大資本の力を借りずに20号も出版した、それは大変な事だったと思う。そこから利益が生まれなければサステナブルとは言えない、という判断。

正直淋しいですが、計画中の次の出版物を楽しみにしています。そして、日々考えていることを丁寧に記録し残し共有していく、その姿勢に学びたいと思う。そう、わたしがこのブログを始めたのも「d」に触発されての事だったのかもしれないと、今となっては思うのです。

ミラノへの旅行で読み始め、最近読み終わった本。

「このデザイン界、この見本市で、わたしは何をどうしたいのだろう?」
「達成したいことは何?その先にどんな幸せが待っているのかな?」
毎年へとへとになりながら、それでも翌年への「目標」のようなものを見つけて帰るミラノ。そんなミラノで読むにはとてもタイムリーだったと思います。自分が誰とどんな風に仕事をして、これから生きていきたいのか、そしてそこから何を得たいのか、サローネの狂騒ぶりと比べながらじっくり考えることができた。

著者の辻信一さんというのは文化人類学社で環境運動家。「100万人のキャンドルナイト」の発起人の一人といえば分かる人もいるかな?たぶん一番有名な著作は『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)だと思う。わたしもこの本から読み始めました。

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「豊かさ」とう幻想を越えて、という副題のついている最新著書 『幸せって、なんだっけ』は、実は経済学の本です。デザイナーは経済についてそんなに詳しくなくても仕事は出来る、、などと長年思ってたけど、最近、考え方を改めているところで、そんな時にこの本はとても勉強になりました。

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環境に負荷をかけすぎている現代社会の暮らし方を自分たちの代で変えないと、将来の世代に過酷な環境を残してしまう事になる。そして、将来の世代というのはずっと先のことでも何でもなくて、わたしたちの子供の世代が大人になった頃には、すでにいろんなことが限界を越えているだろう、というのが最近の意見の主流です。アメリカや日本、ヨーロッパなどの先進国では、開発途上国と比べると一人当たりのエネルギー消費量が30倍なんだそうです。今、すごい勢いで経済成長をしている大国の中国とインドで大部分の人口が先進諸国と同じような暮らしを始めたら、いま現在消費されてるエネルギー量の12倍が毎年必要になる。ちょっと考えただけでも、このままこんな「成長」が続くのは無理、と分かる。

そんな緊急の事態に、一番見直さなければいけないのが経済のありかたそのもの、そしてそれを支えている「進歩主義」の思想なんだ、というのが著者の意見。そこで、とても普通に戦後60年以上信じられてきた「豊かさ」ということばについて、それはwealthなのかwell-beingなのか、それともkeep developingだったのか?と問いかけ、経済の発展とともに移り変わった「幸せ」の基準についてもっとちゃんと話をしよう、と訴えている。

後半の「カルチャー・クリエイティブ(cultural creatives)」という新しい潮流に属する人、というのがとても面白かった。2000年に出版された『The Cultural Creatives』という本から著者が抜粋して紹介しています。

既存の工業や金融、メディアなどを支配して今でも「進歩、発展、開発」を信じている「近代派(モダンズ)」に対し、一昔まえの伝統を重んじ素朴な田舎の共同体意識を信じる「伝統派(トラッズ)」が対抗勢力として存在したのだけど、20年ぐらい前からそのどちらでもない新しい潮流が生まれて、それが「カルチャー・クリエイティブ」と名付けられた。ヒッピーやフラワー・チルドレンなどの動きが最初にあって、そこから年月をかけて育ったこの「カルチャー・クリエイティブ(略してCC)」集団が、今では先進国の大人の人口の1/3ぐらいを占めるようになっている。この人達の志向や活動が今後の環境問題にとっての大きな望みである、というのが著者の意見です。

ものすごく共感できるこの 「CC」の定義。ちょっと長いけど、引用します。

1)本とラジオ
モダンズとトラッズに比べて、本や雑誌をよく買い、よく読む。テレビよりはどちらかというとラジオが好き。

2)芸術と文化
ほとんどのCC が芸術や文化活動に熱心で、そのためには金を惜しまない人が多い。特に、鑑賞するだけでなく、自分で実際にやってみる事を好む。

3)丸ごと志向
CCには何事にもその「全課程」や「全体像」にかかわることを好む傾向が強い。 ひとつの商品を買うにも、どこで誰がどうやってつくり、使い終わったらどうなるのか、といったことに関心を向ける。

4)ホンモノ志向
市場に「ホンモノかニセモノか」という基準をもちこんだのはCCだ。ニセモノとされるものに、プラスティック製品、模造品、手抜き製品、使い捨て、最先端のファッションなどがある。

5)慎重な消費
衝動買いではなく、買い物の前に「消費者レポート」を調べたり、ラベルをよく読んだりする慎重な消費者が多い。

6)ソフト志向
CCには技術の先端を追う人は少なく、ITでもモダンズに遅れをとっているが、文化的な分野では逆に先端を行く人が多い。

7)食へのこだわり
CCには食に強い関心をもつフーディー(foody)な人が多い。食べものについて喋ること、新しい食べものを試してみること、友だちと一緒に料理すること、レストランに行くことを好む人が多い。エスニック、自然食、健康食への関心も高い。

8)住へのこだわり
自分がどんな家に住むかはCCにとっては大事なことだ。新築の家を買うより、古い家を買って自分の好みにしたがって建て替えをするのを好む。

9) 住環境の重視
新しい郊外より、木の多い、静かな、古い住宅街に住むことを好む人が多い。

10)巣としての住まい
住まいを「巣」や「隠れ家」的なものだと考える傾向がある。そこではプライバシーが尊重される。家の中に仕事場をもつ人が多い。

11)インテリアへのこだわり
自分の好みで芸術作品や工芸品を飾る人が多い。本もインテリアの大事な要素だ。家の外観ではなく、むしろインテリアに自分の趣味やセンスの良さが発揮されると感じている。

12)車
安全で燃費のいい車を好む。ハイブリッド車や燃料電池車のように、よりエコロジカルな車があれば、少し無理をしても買いたいと思う人が多い。

13)休暇と旅行
異国情緒豊で、安全だが冒険的で、体験型で、教育的でスピリチュアルで、まがい物ではなく、できれば現地の人のためにもなるような旅を好む人が多い。エコツーリズム、寺院めぐり、自然や文化の保全に役立つツアーなどが好きだ。嫌いなのはパックツアー、高級リゾート、豪華客船のクルーズ。

14)体験志向
CCは製品より、経験を売るサービス業のよい顧客だ。特に彼らが求めているのは啓発的で、自分を活気づけてくれる、感動的な体験。そうしたニーズに応えるビジネスを担っているのもCCである場合が多い。

15)ホリスティックな健康観
CCは専門家としても顧客としても、代替、補完医療や自然食といった分野の主役だ。彼らにとって重要なのは、からだとこころと魂をバラバラではなく統合的に見るホリスティックな健康観。からだを機械のようなものと考える近代医学に懐疑的。

***

なーんだ、自分のことじゃん!と思った人、たくさんいると思うのです。わたしの友人では、これに当てはまらない人のほうが少ないぐらいだ。

そして、これに対する「モダンズ」の価値観がどんなものだったか、というのがまた面白い。 よく考えたら、ひと昔前はこの「モダンズ」的な生き方が主流だったよね、、と実感を持って頷いてしまう。まずは「モダンズにとって一番大事なこと」。

1)たくさんのお金を持つこと、そして稼ぐこと。
2)目標を決めて、その実現のために着実に、そしてその結果がその都度確認できるように、階段を昇ること。
3)魅力的な外観。スタイリッシュであること。
4)ショッピング。特に気分転換や娯楽としての。
5)できるだけ広い選択の自由があること。特に買い物、投票、職業において。
6)仕事においても、消費者としても、流行の先端にいること。
7)国の経済成長や技術的な進歩を支持すること。
8)先住民族、田舎の人々、伝統派、ニューエイジ、宗教的神秘主義を拒絶すること。

さらに「世の中こんなものだ」というモダンズに特徴的な思い込みとして、この15点。

1)内面的、あるいはスピリチュアルなことに関心を持つのはあやしい。
2)メディアによって楽しませてもらう権利がある。
3)からだは機械のようなものだ。
4)組織も機械と似ている。
5)大企業か政府の言うことを聞いていれば安心。
6)大きいほどよい。
7)時は金なり。
8)慎重に計画されたことは実現される。
9)目標を定めること、その実現のために準備することは極めて重要。
10)部分へと分解して検討することが問題解決の最良の方法。
11)科学と工学が、真理とは何かを示している。
12)仕事で一番大事なのは冷静で、理性的であること。
13)効率性とスピードが大事。
14)メディアが大金持ちをもてはやすのは悪いことではない。
15)多様な活動のそれぞれのために、区別され、仕切られた空間を持つのはいいことだ。

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引用長くなったけど、これでたったの2ページ分ぐらいしか、書き写してません。

これを読んで「カルチャー・クリエイティブって自分のことじゃん」と思ったあなた、この本を読んで、さらにそのCC集団が地球を救う「希望」なのだということを知って、自覚して欲しいと思う。 そう、わたしたちの毎日の行動が、そしてそれを理解してくれる友人や家族に話してみることが、環境問題にとってとても大切なことなんだ、と勇気を持たせてくれる本です。