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建築・architecture

レンゾ・ピアノのZentrum Paul Kleeで、建築をその場所に一体化させるために施されていたディテールについて書きます。

I am writing about the details at the Zentrum Paul Klee again, the details to make the architecture integrated into its landscape.

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Zentrum Paul Kleeに向かって歩いていくと、住宅街から美術館の敷地に入ったかな?というあたりから、アプローチの両側に小さな花の咲いた草地が広がります。

よく見ると、雑草に混じってゼラニウムの一種の可憐な紫の花が咲いていたり、薄いピンクのれんげの花があったりして、その繊細な植物の選択とカラー・スキームに「ただの野原ではないな、、」という印象を持ち始めます。

美術館の入り口近くまで来ると、通路の床のコンクリートが不思議な表情を見せていることに気付きました。


近寄ってみると、それは錆びた細い針金みたいなものです。コンクリートを流し込んだ時に、テラッツォの材料のような他の小石やガラスのかけらと一緒に針金を混ぜ、表面を洗い出したものが、時間を経て錆びて茶色くなっている。

この細やかなディテールは、ガラスと鉄とコンクリートで出来たアプローチを優しい表情に変え、背後に植えられたCopper Beech(葉がさび茶色のブナ)と心地よく馴染ませています。

この写真は、建物内部からまわりの植栽を見たところです。構造をつないでいる金属のパイプに、よい感じの苔が育ちはじめている。

こうやって建物のすぐ近くに植物を繁茂させるためには、基礎周りの土の厚みをしっかりとり、土壌を改善したり、水はけや建築素材そのものから流れ出る化学物質に配慮したりと、通常の設計以上のたくさんのケアがなされているはずです。

この美しい美術館がこうやって年月を経て土地に馴染むためには、たくさんの人たちが知恵をしぼり、手間をかけているのだと実感しました。

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When you approach to this museum from South East residential area, you would notice little flowers blooming on the both side of footpath.  They look like weeds – but if you pay attention, they are carefully chosen little gems, such as light purple geraniums.

Then just before the entrance door, there is a subtle detail of concrete floor with little brown lines – it seems wire wools were mixed together with Terrazzo materials into concrete when the bridge was made, then after years the wire are rust.  This texture is harmonious with the Copper Beech tree behind of the bridge, as well as to the impression I gained from the meadow around the building.

The last picture is taken from inside of the building, looking down Bamboo bush and moss-covered metal tube between structures.  To achieve this green growth, the project team had to take care of many unusual matters – thick and rich soil around the building foundation, drainage plan and not to pollute the soil by chemical substance washed away from the architectural materials…

Yes, this harmonious museum was made with great care for the passion and has been taken care by people to succeed the passion.  Great job.

レンゾ・ピアノの建築で 2005年に完成したこの美術館「Zentrum Paul Klee」は、どうやらほんとうに土地の中に埋もれようとしているようです。半分は地下にある展示室は、自然光がたっぷり入る気持ちの良い大空間でした。

こんな風に、建築家のコンセプトがしっかりと受け継がれ、丁寧に植物がメンテナンスされている様子を見るのは、素晴らしい。建築は、出来上がった時に完成するのではなく、時間をかけてその土地と馴染み、使う人から愛されてはじめてその神髄が理解されるのだなと思いました。

コンセプトがはっきりわかる建築模型。ほかに、スケッチや構造体のディテール模型、壁のおさまりの部分試作など、さまざまなプロセスも展示されています。

完成から7年が経ち、勝手に育つ木々もあるだろうけれど、雑草を刈ったりふさわしい草木を選び残すといった丁寧なメンテナンスがされているのは明らかです。

ウェーブの山部分は吹き抜けの大空間で、展示室への入り口とショップ、カフェなどがあります。端の「小さい山」の下は図書室とセルフサービスのカフェ。日本語の書籍もたくさん集められた、充実のコレクションと遠くひらけた眺めで、「丸一日でも、2日間でも楽しめそう、、」と思う場所。

うしろ髪を引かれながら、バス停のある側の出口(上の模型で左はし)を出て振り返った写真です。何年か後にふたたび訪れたら、きっともっと土地と一体になっているのだろうな。

I visited Zentrum Paul Klee in Bern – the museum has been kept really well according to the Renzo Piano’s concept, which is harmoniously submerging into its surroundings.  The architecture was completed in 2005.  7 years on is nicer than my first visit shortly after the opening.  I think the true success of architecture need to be judged after the building is blended into the environment, accepted by the local people and running organization.

This museum is a gem for me – it is receiving sincere and sympathetic maintenance by gardeners, who chosen what to keep between structure and make the building more blended in to the ground.

ずっと昔にインターンとして勤めてくれたデザイナーが関わった「ツリーハウス」を見に行きました。那須の二期クラブの庭、渓谷に流れる川沿いの場所。

木に寄りかかり、その構造に助けを借りながらもできるだけ傷つけないよう工夫された木の上の家は、中に小さな薪ストーブとソファーもあって、川を見下ろす大きな窓が開いたとても心地のよい場所でした。

那須は朝夕に涼しい風が吹き、さすがの避暑地でした。けれど、有機野菜マーケットですら野菜の放射能残留値を示さないと安心できなかったり、牛乳が売れなくなって酪農家が閉じたりと、3.11の影響を受けつづけています。ある場所の、永年つちかわれた文化をじわじわと壊してしまう可能性のある、そんなエネルギー政策はほんとうに見直す必要がある、そう感じた旅でした。

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I visited a treehouse, which is built on a garden of Niki Club in Nasu, Japan.  The treehouse is relying on the structure of a tree, but carefully avoiding to damage the tree.  In the room there is a little wood stove, a sofa and a large window for you to look down a little stream beside the tree.

Nasu was originally opened by Europeans who wanted to escape hot Tokyo during the summer.  Now the area has the Hot Spot problem since the Fukushima nuclear power plant was damages by Tsunami in 2011 – somehow, the wind delivers high concentration of radioactive contaminant to the area.

I think it is urgent to raise awareness for changing energy policy of Japanese government.  It is so obvious that they cannot continue to build and run fragile nuclear power plants on shaken island and destroy their indigenous culture attached to local lives.

霧にけむる湖畔のBregenz駅に降り立つと、行く手に目指す建築が見えました。伝統的な石やレンガの町並みの中にはめ込まれた、不思議な透光性を持つ箱。曇り空とガラスの境界があいまいにかすむ。近づくと、中に構造を隠し持つ皮膜がだんだんと見えてきます。ピーター・ズントーの建築を訪ねるのはこのKunsthausが初めてです。


晴れ間が見えたり、視点の角度を変えると、ガラスが空を映し立体感を持ち、中にある躯体の存在が見えなくなります。夏の日差しや晴れた日なら、遠景でも光を反射してすっきりと矩形なのだろうと想像する。


建物の中に入ると、内側からはもっとはっきり「光の箱」でした。地上階は壁面からの光をたっぷり受けた天井の高い空間、2階と4階は天井ガラスの上にある照明と壁面からの外光の両方をガラスで受けて展示場に光を拡散する空間。3階だけは、ほぼすべて人工的な光で制御された空間。


各階と階段を行ったり来たりして、日暮れの頃の外光と照明のつくりだす変化の中に身を置いてみた。だんだんと外光が弱まり、宵の青い色に変わっていく。そして皮膜の中、フロアの下あたりに埋め込まれたスポットからの光がはっきりと影を作り始める。この40分ぐらいが、この建築をいちばん楽しめる時間だったのではないかと思います。ちょうどやっていたベルギーのアーティスト、ヤン・ファーブルの展示はわたしは好きではなかったけれど、2時間のあいだ建物のなかをゆっくりと歩きまわり、ベンチに腰掛け、階段を上がったり降りたりして飽きることはありませんでした。室内の光は決して展示を邪魔するような光ではなく、ほんわかやんわりと床に届く光。微妙なグラデーションを見せる天井の存在はわたしにとっては圧倒的でした。


日が暮れると、外から見た建築の表情が全く違っていました。建築を夜の闇に浮かび上がらせているのは演出された光ではなく、展示品を照らす照明が外に漏れているもの。昼間に外光を拡散して室内に導いていた皮膜が、今度は中の出来ごとをやんわりと外に伝える。

もっともっと眺めていたかったけれど、気温がマイナス5度だったので、写真を撮る手が凍える前に帰路につきました。

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スイスとオーストリアの国境にある小国リヒテンシュタインで、国立大学の建築科の学生にオランダやフランスからの交換留学生を交えた一週間のワークショップをやっています。テーマは「Light Made Tactile」。空間の中で光を感じ、増幅させ、そこで発見した「効果」を他の人と分かち合うための装置を作る課題。このKunsthaus Bregenzの訪問は、このテーマの延長でもあります。

鉄。

今回の帰国で撮った写真を整理していると、たくさんの「鉄」が写っていました。

風雪を経てざらざらした表面、その凹凸からまだらになった色合い。風化しても、ちゃんとその役目を果たしている鉄たち。英語で言う「patina」ですね。隣り合った木のなめらかで優しい歳の取りかたに、鉄のパティーナがより引き立てられている。


ここまでの写真は法隆寺で撮ったもの。

法隆寺は再発見でした。あんな美しいプロポーションで地震にも耐える構造の建築が1400年も前に建てられ、雨風を受けて装飾が落ちた「素」のものが迫力を持って目の前に存在する、その不思議さ。困難な、手のかかる仕事をたくさんの職人が信念を持ってやりとげた結果なのだな、、、と思いを馳せました。

行きにくい場所にあるからか空いていて、修学旅行バスの中学生が通り過ぎると、ゆったりした時間を堪能しました。こんな不便な場所にあるから、いにしえそのままの広い空を体験できたのだ、、、と感謝したり。

でも、まわりの街はほんとうに殺風景です。国道沿いにはパチンコ店、乱雑な看板、さびついた広告ベンチのあるバスターミナル、、、。どうしてこんな素晴らしい遺産のまわりが、ここまで荒れ果ててしまうのだろう。地元の人は法隆寺を観光資源とは思っているけど、周りの印象が良ければ旅人は「リターン」する、という世界の観光地の法則を知らないようです。誰か、教えてあげてください!

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「パティーナ」の話をしていたのでした。どうも、今回の旅行以来、センスのない日本の地方開発と殺風景な観光地について、つい愚痴ってしまう、、、。

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もう一つ見た「鉄」は不思議なバランスの茶釜です。


歴史保存街区のある奈良県橿原市の今井町で、酒造家を見学した時に二階の座敷に置かれていたものです。箱書きの歴代の持ち主に、織田信長と豊臣秀吉の名前があるのだけど、、、。あながち嘘とも思えないこの存在感。

底が広いのは熱を受ける効率が良く、湯が冷めにくいよう口は狭く。浮かび上がった文字は「内」と「火」の組み合わされたものに見えます。この茶釜が炉に掛けられ、しゅんしゅんと音を立てているところを想像してみる。炭のにおいが漂い、ぴりっとした空気に湯気の湿り気がたちこめる室内。

茶の湯の世界はあまりに深そうでなかなか立ち入れないのですが、美しいと思った道具を使ってみたくてその扉を開く、という入り口もあるのかもしれません。

一週間ほど、「グランドプリンスホテル赤坂」に滞在しました。お気に入りの東京の宿です。


どの部屋も「角部屋」で窓が大きく眺めが良い。部屋の照明を落として夜景を楽しめます。


飾りすぎない、素っ気ないインテリアも好み。サーリネンの椅子が似合います。廊下のドアを開けるとまず廊下があるのも好き。この距離があるから、廊下の音がベッドまで届かない。


その廊下にはバスルームの入り口、クローゼットと並んで冷蔵庫やミニバーもある。片面は大きな鏡。必要だれど雑多なものが寝室からは見えないのは気持ちよい。どのタイプの部屋に泊まってもプランに感心します。

洗面台とバスルームも、質実剛健。たっぷり物を置けるスペースがあり、鏡に近づくことが出来て、しっかりした照明があること。これが洗面まわりの3大条件だと思うのだけど、ここはさらに、使用後に「こざっぱり」保てる素材で、気持ちよいのです。デザインホテルにありがちな「水しぶきが散ったらもう台なし」という洗面台が嫌いなので。



エレベーターホールにある電話台、これもサーリネンかな?時代が一巡して、レトロと言うには「今」にしっくり落ち着く感じ。

この丹下健三設計の新館は1983年にオープンした建物で、ウィキペディアによると「大規模改修が行なわれず老朽化が進んでいる。地域再開発も含めて検討課題とされている。」とあるけど、、、再開発なんてしないで、この親しみやすい「赤プリ」はこのまま残して欲しいです。

ホテルマン&ウーマンが気持ちよいのもここの美点。他のプリンスホテルのようにチェックアウトで並ぶことがなく、出かける時もフロントに着くまでに誰かが来て鍵を預かってくれます。ある時は、ここのセーフティーボックスにパスポートや通帳、外貨なんかを一切合切置き忘れたのだけど(迷惑な客ですね、、)、丁寧な対応で次の宿に郵送してくれました。

「ノー・クリーニング券」も気に入っています。「今日は掃除とタオル交換は必要ないです」という紙を残しておくと、ゴミ箱だけは空にしてくれ、「館内で使える1,000円券」というのを渡されます。宿泊費の割引ですね。部屋にたっぷり置いてあるタオルを毎日替えてもらわなくてもぜんぜん平気だし、シーツも毎日替える必要ないもの。いつも「ホテルって、環境に悪い、、」と思うので、少し気が軽くなる。で、この券を持って朝食を食べに行くのです。高級レストランか料亭しか選べない朝食がとっても高いのだけが不満で、いつも「素泊まり」なので。