Archive

古いもの・old things

昨日、Victoria & Albert Museumの「Friday Late」で開催された『The Secret Life of Furniture』というイベントの中で、17世紀後半に作られた中国の椅子についてトークをしました。昨年12月にオープンしたFurniture Galleryに展示されている家具の中から2点選んで話をしてください、と依頼され、自作の家具Table=Chestについてはいくらでも話せるのでまず選び、次にこの明代の椅子を選んだのは、この椅子に惹かれる理由を自分でも知りたかったからでした。

専門家が素材や技術について分析した資料を読み、自分なりの視点をつけ加えて話そうと準備をしたのですが、イベントが終わってみると学習した多くのことについて話すのを忘れていて、なんだか消化不良だったなぁ、、、と思うので、V&Aに来られなかった方のためにも、忘れないうちに書き残すことにします。

I gave a talk yesterday at a part of the V&A ‘Friday Late’ events, on two pieces of furniture in their new Furniture Gallery.  One of them was Chinese chair in Ming Dynasty style.  I have chosen this piece of furniture because I wanted to discover myself why I am attracted by this chair – to pinpoint aspects of interests and learn more about its charm.

I have read some articles on Chinese furniture in that time, to prepare and add my point of view at the talk.  Now, after the talk I feel that I did not describe at all about the beauty of the chair…  So, I would like to write it down here, for the people who did not make to attend the V&A as well.

***

これがV&Aのアーカイブに載っている展示品(推定1600-1700)の写真です。
Below are the V&A’s official photos in their archive.

ming chair01
ming chair02
ming chair03

「部材は接着されていない」という記述にまず驚きました。素材はHuali Woodと呼ばれるローズウッドに近い硬木で、それを「mortise & tenon(ほぞとほぞ穴)」で組み合わせ、くさびを打ち込むことで固定しています。実物を見ると、たとえば座面下の「たれ」の部分やそれとつながる薄く削られた木材の補強材なども、脚部にくった溝に差し込み、足を載せる横棒が「mortise & tenon」で止まっていることで、補強の必要な場所に固定されていることが分かります。

この椅子が作られた代(1368-1644年)の後半から代の前半にかけては、倭冦と呼ばれた海賊が沿岸部を攻め、満州には後金が興って北から明をおびやかすなど、戦乱が続いていたので、この椅子を所有していた高級官僚は広い中国をあちこち旅する生活だったのではないでしょうか。この椅子は、そんな貴人の生活用具として運ばれるためにできるだけ軽く、気温や湿度が極端に違う場所でも調整が効くように作られていた。乾燥した土地に着いて木が縮み、部材がゆるんでガタガタしはじめたらくさびを大きいものに変えて打ち直し、座りを良くしたことが想像できます。

エレガントな曲線を描く肘あてと背もたれのつながりは「half lapped pressure peg joint」と説明されている繋ぎ手で組まれた5つの部材から作られています。これは、寺院建築などで日本でも使われた継ぎ手で、斜めに重なった2つの部材の真ん中にくさびが差し込まれています。4箇所の繋ぎ手が、背もたれの縦の板の両側と美しくカーブを描く肘あて下の細い縦材(手前から数えて2本目)の上に配置されているのですが、この先が細くなっている縦材が気温や湿度による動きやひずみを緩衝することで、特徴的な円周はいつもおおらかな線を保つことができたのだと思われます。

移動に配慮した軽さと、そのための構造を補強する部材にひかえめにほどこされた気品ただよう装飾。どうやらこの2点が、わたしがこの椅子に惹かれている理由だったようです。

このタイプの椅子から直接インスピレーションを受けたハンス・ウェグナーの1943年デザイン「Chinese Chair」については、またいつかの機会に。

***

First of all I am caught by the part of the text – Nothing is glued, but all parts are connected with Mortise & Tenon joints.  The material is called Huali Wood, has similar character to Rosewood.  Even structural support, such as apron and frames under the seat, are all trapped into grooves by the lower stretcher with Mortise and Tenon.  The lowest stretcher has wide top and it is a footrest.

At the end of Ming Dynasty, the owner of this chair must have had busy travelling life, as a hight bureaucrat who had to take care of Wokou pirates and the rising Northern nation Qing on behalf of the emperor.  This is why the chair had to be light and flexible.  In cold and dry climate the solid wood shrank a lot and the joints starts to be loosened, the chair will be wobble.   You can stop it by changing the size of the wedge in those joints.

The prominent large curved piece of armres-to-back is made by 5 jointed solid piece, by a technique called ‘half lapped pressure peg joint’, which was often used in Japanese temple architecture.  Four joints are located next to the both sides of the wide vertical back rest, as well as top of elegantly bent vertical supports of armrests.  I guess these tapered shape of the supports are flexible enough to absorb the movement of wood and retained the shape of the single curving structure.

The lightness for mobility, and their playful and modest decorations to disguise the structural support – these two points are making this chair charming and attract me a lot.

In the future I will research its direct descendant “Chinese Chair”, designed in 1943 by Hans Wegner.

ロンドン中心部にお買いものに行って、あるビルの入り口の床材を張り直しているところを発見。色付きの陶土を小さなタイルにしたもので、約150年ぐらい前のヴィクトリア時代に流行した様式です。ビルが建てられた年代に併せ、復元しているもよう。

小さめのタイルを均一な目地幅を残して綺麗にレイアウトするのは職人技ですが、今でもその技術が残され使われているのが素晴らしい。

下の写真は改築中の別のビルで、もともとあった木製の手すりを一度外し、掃除と修復を施して元の壁に戻したところです。こういう修復は、新しいものを取り付けるよりも手間ひまがかかって施工コストも工期もかさみますが、それを受け入れて建物の歴史を新しい内装に残すことに決めた施主の意識の高さに拍手をおくります。

I respect people to pay a little more to retain a memory of a place – they help to succeed arts by fabricators and builders, too.

The two top picture are from an Victorian building in central London, where the floor is restored with original method of mosaic tiles.  The above picture is a handrail, which was taken down once to be cleaned and restored, then put back to the original wall after the whole staircase was refurbished.

レトロ・ロンド」はベルギーのフランダース地方の有名な自転車レース「Ronde van Vlaaderen」の地元をヴィンテージの自転車で走るイベントです。

RR01RR02RR03ビール祭りをやっているアウデナールデの街を出発する初心者向け40キロまたは山坂のきびしい70キロの各ルートは、田園を抜け、風車を眺め、農家の庭先や古道具屋カフェで休憩ができる楽しいコースになっていて、いつも走り慣れている人たちが丁寧に計画し、地元の人たちのサポートを受けて作られていることがわかります。

RR04車に積んでベルギーに運んだのはこの自転車、1970年代のフランス Gaidou製レディース用ツーリングバイクです。ギアが10段階切り替わるので、坂道もばっちり。太いタイヤで石畳にも対応。

RR05今までに2度、去年3年前のをこのブログでもレポートしていますが、4度目の参加で石畳を走ることにもだいぶん慣れて来ました。それから、今年はじめてレース用のジャージで走りました。速くもないのに格好だけ決めてるのも恥ずかしい、、と思っていたのだけど、近頃は少しだけツーリング的ふくらはぎになってきたし、やはり快適なので思い切って。

だから、という訳でもないと思うけれど「スタイリッシュなライダー」の3位に選んでもらって、他の受賞者との記念撮影が下の写真です。地域の自転車行政のお役人さん、出発&ゴール地点の自転車ミュージアム館長、市長、ヴィンテージな衣装に身を包んだ牧師さんたちとにっこり。

RR06レトロ・ロンドの翌日は、石畳の急な坂道で有名な場所をいくつか訪れ「ふぇ〜、これを漕いで登るの〜?」とため息をつく。ひとつは「壁」という名前までついた、歩くのも大変な坂道でした。

RR07RR08ここには、日本の地方にも参考になる「リピーターを生むツーリズム」の原点がそろっている気がします。地元の歴史と生活を大事に思っている人たちが集まってささやかではある場所の良さを育て、心地のよい「体験」を訪問者に差し出す。

今回のレトロ・ロンドでも300人近い参加者の半分ぐらいはベルギー外の近隣国や遠くはオーストラリアから来ていたヴィンテージ自転車のファン達で、たくさん素敵な自転車を見て、風を切ってペダルを踏んで汗をかき、ベルギービールでうるおって、にこにこしながらそれぞれの帰路についたのでした。

わたしのベルギー体験の幸せな締めくくりは、このビール・アイス。少しビターで、もう最高。

RR09

先日ここに書いたエキサイトの「これ、誰がデザインしたの?」を遡って読んでいたら、日本滞在中に見逃してしまったらしい汐留ミュージアムでのウィリアム・ド・モーガン展のことが紹介されていました。

イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動でウィリアム・モリスと一緒に中心的なデザイナーだったウィリアム・ド・モーガンの作品が多数展示されているようです。まとめて見るチャンスを逃したのは、残念。実はド・モーガンのいくつかの作品は身近な存在なのです。

毎朝、顔を洗う洗面台にタイルが2枚、置いてあります。パートナーが何年も前に買ったもので、タイルとほぼ同じ頃に建てられた家によく合っています。キッチンに飾られている絵皿もド・モーガンの作だと知ったのは最近になってからですが、これらはどれも、真ん中で割れていて裏から金属のピンでくっつけてあったり、一部分欠けてなくなっていたりして骨董価値はないらしい。そういう状態のものなら今でも古物屋に出回るらしく、友人宅でもこの色合いの皿を見たことがありますが、どれも装飾的だけれど表情のある動物や鳥がいきいきと描かれています。

スタジオと家のちょうど中間あたりの街WalthamstowにあるWilliam Morris Galleryに行くと、アーツ・アンド・クラフツの家具やタペストリーやガラス器などと一緒に、ド・モーガンのタイルも展示されています。

右下の野うさぎがかわいい。けれど、これは繁殖期にボクシングのような戦いをして、勝った方が力を誇示している図柄らしく、たしかに左の野うさぎは 表情がしょぼんとしています。ここはウィリアム・モリスが生前に住んでいた家がミュージアムとして公開されているもので、ステンド・グラスや内装も残され、当時のたたずまいが楽しめる場所です。

ロンドンの西のChiswickにはド・モーガンのタイルが今も残っているパブ The Tabard Inn があって、近くに行くと寄ることがあります。ここに描かれているへびは迫力です。

前述の「これ、誰がデザインしたの?」の記事ではじめて知った Leighton House はミュージアムになっていますが、現在改修工事中で2010年の4月に再公開するようです。ここにはド・モーガンが監修をし、彼のタイル作品のルーツだった中東のタイルでびっしり装飾された部屋があるみたいで、春になったらぜひ行ってみようと思います。

秋の深まってきた今の空気とド・モーガンの使ったターコイスやれんが色の色調がぴったり合うからか、なんだか芋づる式に興味のわいた記事でした。紹介されていた「Spooks」というテレビシリーズのYouTubeもいくつか観たけど、ロケーションとなったLeighton Houseは確認できず。あと何本か観てみようかな。

鉄。

今回の帰国で撮った写真を整理していると、たくさんの「鉄」が写っていました。

風雪を経てざらざらした表面、その凹凸からまだらになった色合い。風化しても、ちゃんとその役目を果たしている鉄たち。英語で言う「patina」ですね。隣り合った木のなめらかで優しい歳の取りかたに、鉄のパティーナがより引き立てられている。


ここまでの写真は法隆寺で撮ったもの。

法隆寺は再発見でした。あんな美しいプロポーションで地震にも耐える構造の建築が1400年も前に建てられ、雨風を受けて装飾が落ちた「素」のものが迫力を持って目の前に存在する、その不思議さ。困難な、手のかかる仕事をたくさんの職人が信念を持ってやりとげた結果なのだな、、、と思いを馳せました。

行きにくい場所にあるからか空いていて、修学旅行バスの中学生が通り過ぎると、ゆったりした時間を堪能しました。こんな不便な場所にあるから、いにしえそのままの広い空を体験できたのだ、、、と感謝したり。

でも、まわりの街はほんとうに殺風景です。国道沿いにはパチンコ店、乱雑な看板、さびついた広告ベンチのあるバスターミナル、、、。どうしてこんな素晴らしい遺産のまわりが、ここまで荒れ果ててしまうのだろう。地元の人は法隆寺を観光資源とは思っているけど、周りの印象が良ければ旅人は「リターン」する、という世界の観光地の法則を知らないようです。誰か、教えてあげてください!

***

「パティーナ」の話をしていたのでした。どうも、今回の旅行以来、センスのない日本の地方開発と殺風景な観光地について、つい愚痴ってしまう、、、。

***

もう一つ見た「鉄」は不思議なバランスの茶釜です。


歴史保存街区のある奈良県橿原市の今井町で、酒造家を見学した時に二階の座敷に置かれていたものです。箱書きの歴代の持ち主に、織田信長と豊臣秀吉の名前があるのだけど、、、。あながち嘘とも思えないこの存在感。

底が広いのは熱を受ける効率が良く、湯が冷めにくいよう口は狭く。浮かび上がった文字は「内」と「火」の組み合わされたものに見えます。この茶釜が炉に掛けられ、しゅんしゅんと音を立てているところを想像してみる。炭のにおいが漂い、ぴりっとした空気に湯気の湿り気がたちこめる室内。

茶の湯の世界はあまりに深そうでなかなか立ち入れないのですが、美しいと思った道具を使ってみたくてその扉を開く、という入り口もあるのかもしれません。

前回、ヴィンテージ自転車のオークションのことに触れ、でもその様子を書く時間がなかなかありませんでした。

いろいろな形と模様の革のサドルがあのイベントでのわたしの一番のお気に入りでした。


オークションを仕切るのはプロのオークショネアー。6時間立ちっぱなしでヴィンテージの自転車や看板などを紹介しつづけ競っていく、その体力には驚かされます。前列に陣取っているのは年季の入ったコレクターたち。


1台だけ欲しいと思ったのはこの自転車。1930年代のものがほとんど新品のぴっかぴかなコンディション。しかもわたしサイズ。パートナーが競ってくれたのだけど、残念、負けました!


このぼろぼろの部品にも競りナンバーがついてたけど、誰か買ったのかな、、?なんとなく、欲しくなるのも分からなくはないけど。インテリア小物として。

ロンドンから南西に2時間ほど車を走らせ、サウザンプトンの近くのBeaulieu(ビューリーと発音)という小さな街で毎年開かれる「オート・ジャンブル」というのに行ってきました。


2,000軒の小さな屋台が芝生の丘に並ぶ様子は壮観。ごちゃごちゃと、所狭しと、ヴィンテージの車の部品や古い自転車、車やオートバイや自転車に関係するありとあらゆる物が売られています。


前夜の雨で芝生の地面がぐずぐずなので、長靴が一番正しい履物。気合いの入った人は、こういうカートを引いて掘り出し物を探しに来る。


飛行機のおもちゃを売る人、おもちゃの車のタイヤばっかり並べてる店。売れるのかな?


1920年代のピクニック・セットがあって、かなり真剣に欲しかった。けど、高い割に使えそうにないのです。インテリアの飾りにしては場所をとるしなぁ、、、。ヴィンテージな自転車の部品もあちこちに。


これはムーアの彫刻ではなく、車のボディー。思いっきり錆びてますが。さびさびのボディ部品だけ売ってる店もあり。並んでるってことは、買う人もいるのか、、。


ハンドルの専門店と、オイル缶のスペシャリスト。トニー・クラッグの80年代の作品のインスピレーションはここから?


出店者の多くは2日間その場でキャンプしていて、あちこちにモーバイル・キッチンがしつらえられ、美味しそうな匂いが漂っている。コンパクトで軽やかで、いいなぁ、こういう暮らしも、、、なんて思いながら、見入ってしまうのでした。


毎年9月にある、このイベントのオフィシャルのサイトはここです。

車に古い自転車を積んでフェリーでドーバー海峡を渡り、フランスを越えてベルギーのゲントの近く、Oudenaardeという街であった「レトロ・ロンド」に参加して35キロ走りました。「ツアー・オブ・フランダース」という歴史のある自転車レースのコースの一部をレトロ自転車ファンが走るというイベントで、今年で2年目の開催。


まずはGentでビールを一杯。右はチェリービールです。わたしはこの甘いビールが大好き。今回の自転車はこれ。アルミの八角柱フレームで作られた、カミナージョンというメーカーの自転車です。


20年以上古い自転車でそれに併せた服装で参加、というのがルールなので、レーシング自転車の人は古いジャージ、配達用自転車にはコールテンのズボンに帽子とか着てます。わたしは1941年フランス製の「ちょっとそこまでお買い物」用の自転車なので、ベレー帽と白いソックスで、ちょっとリセっぽく(この際、トシは忘れて)。


オーガナイザーもレトロな服装で。左からお巡りさん、メカニック、司会のおじさん、町長夫人、町長、牧師さん。


150人の大集団でスタート。街の中心部を2周ほど走り、郊外に出るとすぐにこんな風景に。牛や馬があちこちにいて、休憩場の農家では目の前をニワトリが走り回っている。コースの途中では飲み物(ビールも!)や果物、アイスクリームにケーキなどがふるまわれ、道ゆく人から声援がかかる。街中だけでなく幹線道路にもサイクル・レーンがあるし、イギリスよりも快適。車もかならず自転車を優先してくれます。自転車カルチャーの歴史の長い国で初めてサイクリングしたけれど、ゆったりしていて良いものでした。

石油が枯渇して今みたいに車を運転できなくなる100年後、工業も衰退して新しい製品が出回らなくなったら、みんなこんな風にして古き良き時代の自転車を修理して田園を走るのが世界的なレジャーになるのかな、、なんてふと思ったり。


きつい坂道のある65キロのコースを走り終えた人たち。イギリスからは14名参加、その他オランダやドイツからもレトロ自転車とサイクリストが集まっていました。


走り終えて、またビール。うーん、美味しい。でもこれ、アルコール度が11%もあるビールなのです。危ない、あぶない、、。

イギリスの銀行で口座に関するエラーが続き凹んでるんですが、気を取り直して先月帰国してた時に行ったお気に入りの場所について書きます。

ナガオカケンメイさんがやっているD&DEPARTMENT。東京店に行きました。数日前に「情熱大陸」に出たようなので、今たくさんの人の噂にのぼって来客がひっきりなしかもしれないですね。

全国の埋もれたグッドデザインを発掘して蘇生させる独自のコンセプトはすでによく知られているし、わたしが紹介するまでもないと思うのですが、ここの醍醐味はレストランに詰まっていると思った。ぜひここでお昼を食べたり、お茶をしたりしてみてください。とっても懐かしい、誠実で温かく夢見がちだった頃の空気を思い出します。


カトラリーや食器も「品のある」業務用の、とても使いやすいものなのだけど、何にもまして美味しいこと! 岩手に自社の農園のあること、スタッフがそこで農作業の実習をしたりする事を知って、納得しました。下の写真はドライカレー。


シフォンケーキとメープルシロップのアイスクリームも満点。サイズの違う角砂糖が混ぜて入れてあって、好きな量を選べる。こういう細やかな気遣い、すみずみまで清潔なレストランと調理場、気持ちの良い店員さん達。うーん。志の高い人のまわりには、同じ気持ちを共有する優秀な人たちが集まるのだな、、と唸ってしまった。

規模の小さな会社の、心のこもった業務や商品がなつかしい。そういうものに触れると、幸せな気持ちになる。そういうマインドの感じられる仕事だけを集めているD&DEPARTMENTでは、だからこんなに心安らぐ空気が流れているのですね。良質のアルチザンの結晶とでも呼びたい、オアシスのような場所。デザイナーとして日々誰とどんな仕事をしていきたいか。「D&DEPARTMENTに置いてもらえるような仕事をしたいなー。」と、目標のようなものが出来たのでした。

それにしても、手のつけようのない程大きくなって、カスタマー・サービスに血の気の通わなくなった会社とは付き合いたくないと思う。できれば商品を買いたくないし、無責任なサービスに出くわすのも不愉快。どこかに、誠実でなつかしい空気の漂う銀行はないかなぁ、、、。

古い自転車を集めたり、修理して乗ったりするのが趣味な人が、実は世界中にたくさんいます。で、そういう人達が集まってレースをする会、というのもある。快晴の日曜日、西南ロンドンのHern Hillにある自転車競技場でそういうレースがありました。コレクター達と、ピクニック気分で応援に来ている家族や友人が、和気あいあいと集まって。

普通の路上では乗りにくい、レース用のペニー・ファーディングをサーキットで初めて試したわたしのパートナー。作られてから100年以上経っている自転車だけど、とりあえず走れるように調整できたみたいです。


一見ふつうの自転車レースですが、参加はすべて戦前の自転車。近寄ってみると「ほんとだ古い、、」と分かる。ガレージの片隅で、こういう古い物をこつこつと修理するのが趣味な人たちが、たくさんいるのは面白いですね。そして、直したら乗って走る。


車輪が木製の「Bone Shaker」と呼ばれる自転車も登場。 たしかに乗り心地が悪そうだ。

実はわたしも、レディースのレースにちょこっと出ました。Caminargentというフランスのメーカーの1941年製のアルミフレームの自転車で。それが、今までのサイクリングやウォームアップでサーキットを何周かした時はなんともなかったのに、レースでちょっと真剣に飛ばしたら、後ろの車輪がぐらぐらに揺れてそれがハンドルまで伝わって、ものすごく怖かった。


結果はビリ!ヴィンテージ自転車ファンからは絶賛のレアなものらしいけど、「ちょいと角までパンを買いに行くための自転車だから、もともとレース向きじゃないんだよ。」となぐさめられたのでした。まぁ、マシーンの問題だけじゃなく、わたしの脚力もぜんぜんダメですが。

「銀ちゃん2号」という愛称のこの自転車で、今月末にベルギーである「レトロ・ロンド」というサイクリングに参加します。20年以上古い自転車で、服装もレトロな人のみ参加というツーリング・イベント。今度はゆっくり走ります。