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インテリア・interior

前回の河井寛次郎記念館のことを書いていて、この春に訪れたバーバラ・ヘップワースのアトリエを思い出したので、続けて紹介します。


なんといっても、庭。「Museum & Garden 」と呼ばれているくらいなので。手が入っているけど、よい感じに自然味の残された庭。そこに彼女の作品が点々と置かれています。母屋から、一旦庭に出てアトリエに入る。


ここは「思索室」。河井邸での庭を眺める茶室にも通じる、光溢れる温室。


こちらは制作室。扱う素材もさまざまだったので、かなり広い。石彫のコーナー、石膏や粘土の場所、それを鋳型にする作業机など。ここも天窓から光がさんさんと入る。使われている道具や物の置き方など、乱雑な中にも美意識が徹底しているアトリエ。


エントランスの上の階、母屋の一角にあるサロン。小さめの作品を置くギャラリーでもある。元夫で2人の娘の父だったベン・ニコルソンの作品が掛かっていたり。

住まいとアトリエの適度な距離感、表通りからはほとんど何も中の様子をうかがえない素っ気ないほどのたたずまい、中に入ると気持ちよく広がる庭と手作業で作られたり集められたりしたお気に入りの物たち。そんな場所を、家もアトリエも庭も、長い時間をかけて丁寧に作っていったのだなあ、と想像する。数々の作品の背景に、この楽しくも地道な作業も隠れていたことに思いを巡らせる。こんなに心惹かれるのは、それがわたしのやりたい事だからですね、きっと。


この奥に、あの庭が広がるとは想像もできない入り口。Tate St. Ivesの別館として公開されています。この夏にはバーナード・リーチのアトリエも公開になるそうです。


アトリエを出て5、6分歩くと海辺に出る。こんな風景を間近に見ながら制作していたなんて、、、いいなあ。

新緑の京都で「河井寛次郎記念館」を訪れました。

表からは京都の町家に見えるけれど、中は深く広く、住居とスタジオと作業のための中庭と、素焼き用の竃、そして奥の傾斜に沿って登り竃がある。氏が当時仕事をして家族が暮らしていた様子そのままに保存してある貴重な場所です。


住まいと仕事場を心地よく区切る中庭。そして迫力の登り竃。手前から2番目の室から、数多くの作品が生まれたそうです。


素焼きされた陶器に釉薬をかける作業をしたスタジオ前の中庭。並んだ壷の中に釉薬。

住居部は飛騨の合掌造りの内部を思わせる、吹き抜けのあるどっしりした空間。建具や家具のディテールに民芸の重量感と京都の繊細さが同時に息づいている。


実は大学院生だった14年前に一度行っているのだけど、ほとんど印象に残っていなかった。今回あまりに感銘を受けたので「すでに28才にもなっていたわたしは、どうしてこの良さが分からなかったんだろう?」と呆れたり。たぶん、「暮らす」ことと「仕事をする」ことが一緒になっているこの心地よさを、建物の細部まで気を配ったこの住まいの暖かさを、理解してなかったのですね。若かった、、、。

河井寛次郎や浜田庄司の重厚な陶器があまり好みでない、というのは今でも正直なところなのですが、今回の訪問でそういう作品や民芸の運動の後ろにある、日々の生活を大切にする彼らの思想に触れました。バーバラ・ヘップワースのスタジオと自邸、仕事場と融合した庭などを見て受けた印象と、似ている気がします。

わたしのスタジオ兼住まいの玄関ドアには鍵穴が3つある。いわゆる「キャッチ」でばたん!と自動ロックされ、外からは鍵を入れて回して開ける「リムロック」と、その上下に鍵を入れて回すと太い金属のバーがスライドしてドアを止める「デッドロック」が2つ。

イギリスの冬は湿度が高いので木製のドアが膨張し、この「デッドロック」の鍵穴の位置がずれるようで、毎年、秋も深まると下のほうの鍵がかからなくなります。

気温が高くなると、ドアも乾燥して引き締まり、両方の鍵がちゃんとかかるようになる。今週から両方かかるようになった。春になったな〜、と思う。


スタジオにはもう一枚、季節を感じさせてくれるドアがある。スタジオに隣接したバスルームに入るための2枚のドアのうちの一枚が、冬になると膨張して午前中は閉まらないのです。午後になって暖房が効いてくるとドアも乾いて収縮し、閉まる。これはクリアランスを少なくしすぎた設計ミス。あと2ミリ足してたら大丈夫だったのに。でも、3枚のパネルがあたかもつなぎ目のないかのごとく並んでいるほうが格好いいと思った。自分でデザインして改装したのでこういう失敗は「学習」ですが、それにしても閉まってないのは格好わるい、、と冬ごとに思うのでした。


ちなみにスタジオ兼住居は1920年代に建てられた元おもちゃ工場だった建物の一角にあります。住宅地と工場地帯の狭間という感じの、どちらかというとラフな地域なのだけど、この中庭に入ると少しほっとする。そんな場所です。