『調香師の手帖』

年の始めに「今年はもう少しアップします」と記したのに、ブログの更新は2月以上の間隔が空いてしまいました、、。見たもの、行った場所から考えたことがたくさんあるのに、どこから手をつけたらいいの?という感じなので、師走になった今、まずは今年の「発見」から。

一つ前のポストで触感について書きましたが、 触覚とあわせて最近とても興味があるのが「嗅覚」です。デザイナーとして「視覚の快適さ」をいつも意識していますが、嗅覚は忘れられがちだなぁ、とふと思い、ではもしも「匂いのランドスケープ」についてもっと意識したら世界はどう見えるかな?と思った。そんな時に手にとって、面白い世界の見方(かぎ方?)を教えられたのが、この本です。

『調香師の手帖(ノオト)』-香りの世界をさぐる-
中村祥二著・朝日文庫 2008年出版

資生堂で長年香りについて研究をし、香水を調香する専門家としての著者が「香りやにおいをめぐる新しい心の文化を模索しようという人たちのために、何らかの意味を持てば」という意図で書き下ろされた随筆です。自身の体験からつむがれた言葉で匂いについて説明したい、とあとがきで語られているように、読みすすむと追体験をしているような錯覚にかられ脳内に匂いが立ちこめる。それがわたしの楽しい読書体験でした。

そして、この本をガイドとして少し実体験をしてみているところです。

ひとつは全く未知の世界だった香水に手を出し始めたこと。
文中で触れられていたある香水の「単一のウッディー・ノートを特徴にした上品で優雅な香り」というものをかいでみたく、そして香水は「身にまとって」みないとその効果を感じられない、ということばに納得し購入。あまりにもビギナーで経験が浅く、他のものとの比較がまったくできないこともあり、感想は「うーん?」というところ。西洋人だと、自分の体が発する匂いと混ざっていわくいいがたい香りになるのかなぁ、わたしは香水に負けている?という気がするのです。もしかすると、香水は自分が楽しむというよりも、同席する他の人たちに向けたメッセージなのかも?と思ったり。

もうひとつは、近年たのしんでいたお香の世界にもう少しだけ歩を進めてみたこと。
お香は同じものを使い続けるよりも、違うものをあいだに使うと鼻が覚醒される、という言葉にふむふむとうなずき、インテリアの一部のように使っている松栄堂の「堀川」のルーティーンに「天平」を足してみました。これはとても興味深い効果で、時に違う匂いをかぐと、慣れ親しんでいると思っていた匂いの新しい要素のようなものに気付いたり、残り香を調整するため使う量を変えてみたりと、自分にとってもっとも心地よい匂いについて、考えさせてくれます。

さらに香木そのものをかいで(専門的には「聞いて」?)みたくなり、でも炭を熾して仕立てる本格的な聞香の手間はおっくうなので、小さなヒーターで暖める携帯式の香炉を試してみました。白檀と沈香の小さなかけらそのものから、すぅっと立ちのぼる香り。これは、驚きです。自然のちょっとした偶然の作り出す物質が、暖められるだけでこんなに強い匂いを放ち、それを古代の人が見つけて大切に使ってきたこと、、、。悠久の時間に思いを馳せるきっかけをくれる香り。つい、他の普通の木はどんな香りを放っているのかな?と手に取るすべての木材をくんくんしてしまうような。

鼻をもっと鍛えたら、自分の周りの感覚地図はかなり違ったものになってくるなぁ、という、不思議な予感をくれた本でした。新しい感覚地図と、毎日のデザインの仕事がどう重なるのか?については、まだまったく予測不可能なのですが。

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