プロセスを見る
今年のサローネでとても面白かったのは、Konstantin GrcicがPLANKのためにデザインした椅子の開発の過程をTriennaleで展示していたもの。
ワイヤーネットで囲んだ工場の中のようなセットになっていて、プラスティックを混ぜて色を作る機械があったり、強度試験のための装置にその椅子が入って砂袋が載せられていたり、ヘルメットやゴーグルなんかを着けるように、という工場によくあるサインがあちこちに貼られたりして、本人も楽しんだな、これは、、という感じ。入り口横に、ちゃんとロッカーがあって作業服が掛かっているし、さりげなく消化器なんかも置かれている。
なにより面白かったのは、紙やフォームで形を検討している原寸の模型から、実際のプラスティックでつくった試作、それがばらばらに砕けている写真など、この椅子の開発のプロセスが実物や写真でふんだんに展示されていること。プラスティックの鋳込みが途中で止まってるのは、粘度と厚みと圧力の関係で素材が端までとどかなかったんだな、、、などと腕を組んで考えてしまう失敗作が堂々と飾られている。見ていてほんとうに楽しいのです。
偉いなー、コンスタンティン。素晴らしい。
デザイナーと工場のこんなやりとりを見るのは、若い人たちだけじゃなく、わたしにもとても勉強になる。
このプロセスを見て、自分もこの技術を使いたいと思うデザイナーが出て来るだろうし、でもこれだけ見せられたら、意地でも違ったやり方でこの技術を使いたいと思うのがデザイナーってもんです。そして、別の今までデザインの表舞台に出て来なかったような加工技術でも、共同作業をして新しい実験をする可能性がまだまだあるのかも、と思わせてくれる。
彼のHPのプロジェクトのトップ「MYTO」に、この椅子の強度実験をしてる映像が出てます。 わわわ!!びよょ〜ん!
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出来上がった椅子が好きか嫌いか、というのはまた別問題で、これは一緒に暮らしたくなるような椅子ではないな、というのがまあ、正直なわたしの意見です。Magisから出ているChair_ONEはスタジオで使ってるけど、あれがぎりぎりかな。
今年もう一カ所、Cassinaから出ていた合板と皮の2脚の椅子、これはアイデアも仕上がりも質感も、どれをとっても完成度の高い椅子でした。こういう仕事をいちはやく見れるのが、ミラノの素晴らしいところですね。真ん中は、 新作の椅子に座ってインタビューを受けているコンスタンティンを撮ったスナップ。今年はヒゲもじゃですね。